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――― | 本題に入る前に、 NRS リターダの技術および生産のバックボーンであるフォイトはどういう会社なのか、 NRS リターダは知っていても、 フォイトは分からないユーザーもいると思いますので、 まず、 その辺からお話しください。
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升田> |
フォイト社は創設者の J.M. フォイトが 1867 年に設立した会社で 130 年以上の長い歴史をもったメーカーです。 現在でも売上高の 5 割を占める製紙機械製造で興した会社ですが、 流体技術を生かしてタービン技術でも強みを発揮しており、 1903 年に造ったナイアガラの滝の当時の最高出力発電用ツインタービンはいまでも使っているそうですし、 1926 年にタグボート用に開発した 360 度回転可能なフォイトシュナイダープロペラは現在でも高いシェアをもっています。
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――― | トランスミッションでも強みを発揮していますが、 いつ頃から手がけているのですか。
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升田> |
鉄道用ターボトランスミッションを開発したのが最初で 1932 年のことですから、 この分野も相当長い歴史をもっています。 ちなみに、 市内バス用トランスミッションは西ヨーロッパ市場で現在約 30 パーセントのシェアをもっています。
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――― | さて、 本題である NRS リターダ、 つまりフォイトのリターダですが、 鉄道用のブレーキシステムとして開発されたのが最初だと聞いていますが ・・・・・・。
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升田> |
そうです。 1961 年にロッキー山脈を越えるサザンパシフィック鉄道の鉄鉱石を運搬する 4000 馬力ディーゼル機関車に装着されたのが最初ですが、 この貨物列車は信じられないほど長大で総重量が約 1 万トン、 その超重量列車が 30 パーミルの下り勾配を装着したリターダだけでもちこたえたといいますから、 これだけでも、 流体式を技術的な特徴とするフォイトリターダの制動能力の高さを分かっていただけると思います。
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フォイトリターダを最初に装着したロッキー山脈越えサザンパシフィック鉄道の鉄鉱石運搬用4000馬力ディーゼル機関車。 連結総重量約1万tの超重量列車が下り30パーミル勾配を流体式リターダだけでもちこたえたことは語り草になっている
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〈 GVW8t 以上のバス需要の 5 割占める 〉
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――― | 現在フォイトリターダのシェアは。
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升田> |
98 年度実績でみると、 西ヨーロッパで車両総重量 8 トン以上のバス新車登録台数は 1 万 2000 台でリターダ付きが 9 割を占めていますが、 そのうちの半分はフォイトです。 16 トン以上のトラックは登録台数が約 10 万台で 23 パーセントがリターダ付きですが、 リターダ装着車のうち 31 パーセントはフォイトのリターダが装着されています。
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――― | リターダを装着するバスの 5 割、 トラックの 7 割、 つまりフォイトリターダ以外の部分はどんな方式のリターダが挙げられるのですか。
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升田> |
これまでは電磁式が多かったですが、 最近急速に装着率が上がっているトラック分野はわれわれと競合する流体式リターダが多いですね。
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――― | トラック分野で流体式リターダを採用する例が多くなっているようですが、 今後の見通しについて、 どのように見ているのですか。
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升田> |
ある研究機関が調査した資料によると、 車両総重量 16 トン以上のトラックの流体式リターダ装着率は 1995 年段階でベンツが 15%、 MAN やスカニアが 30% となっていますが、 これが 2002 年予測ではベンツが 40% 以上、 ボルボが 30% 以上、 MAN が 50% 以上、 スカニアは 60% 以上という見通しとなっています。 ここでいう流体式リターダはフォイト製品ばかりではありませんが、 トレンドとして流体式リターダの装着が増加することは間違いなく、 これから本格的な普及の時代が到来するだろうとわれわれも期待しています。
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――― | 西ヨーロッパ市場は流体式リターダが認知されていますが、 日本市場ではいまいちの観を否めません。 この辺をどう考えていますか。
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升田> |
日本市場で当社が NRS リターダとして展開しているわけですが、 需要の 8 割がラフテレーンクレーン装着向けです。
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――― | なぜ、 ラフター装着が多いのですか。
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升田> |
ラフターの場合、 25 トン吊りで車両総重量 ( GVW ) 26 トン、 50 トン吊りで 38 トンぐらいですが、 GVW に比べエンジン排気量が小さいことに加えて、 多段対応でオートマチックトランスミッションを採用していますから、 どうしてもエンジンブレーキが利きにくい。 このため、 建機メーカー各社さんとも当社の流体式リターダを採用されたということです。 トラック分野については 92 年に日野自動車さんに採用されてから、 年間 3 桁台の需要で推移してきたのですが、 98 年に永久磁石式リターダが市場投入されたことでちょっと苦戦を強いられているという状況です。
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――― | 苦戦されている要因は。
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森内> |
やはり価格が安いということでしょう。 電磁式の場合、 本体取り付けと配線だけで工事が簡単で後付けもできます。 それに比べて当社の流体式リターダは水冷ですから、 ラジエータからの水管工事が必要で取り付け作業が大掛かりになります。 リターダ本体に加え取り付け費で結果的に高くついてしまいます。 この辺がネックといえば、 ネックですね。 性能で比較してもらえば、 十分納得いただけるのですが、 景気の低迷しているいまの時代、 価格先行で選択されてしまうのはやむを得ない面もあります。
競合他社が増えたことやトラック総需要の落ち込みに加えて、 主力需要分野であるラフター市場も需要が半減以下という状況ですから、 きびしい状況にあります。 台数的にいえば、 90 年に日本市場での展開が始まってから、 過去 10 年間の販売累計が 1 万台ですが、 需要の流れからいってもうちょっと数字は大きくて良いはずなんですが。
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NRS リターダのラインアップ。 左からR133 ( 最大制動トルク4000Nm ) 、 R120 ( 2000Nm ) 、 R115 ( 3200Nm )
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――― | 御社が現在 NRS リターダとして展開している製品はどのくらいあるのですか。
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升田> |
最大制動トルク別にインライン対応の 4000 ニュートンメータの R133 と 2000 ニュートンメータの R120、 それにオフライン対応の 3200 ニュートンメータの R115 の 3 シリーズです。
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――― | 今回三菱自動車の新型トラクタに新たに追加設定 ( 従来モデルに R120 設定 ) されたのは R115 シリーズですね。
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升田> |
R115 シリーズの R115HR という機種です。 数字の後に着く H はハイドライバーの略で増速タイプ、 そして最後の R は右という意味で右ハンドル車に対応する右側装着ということを意味しています。 技術的な特徴をひと言でいえばこの HR が付いたということに尽きます。 具体的に言いますと、 リターダは従来トランスミッションやプロペラシャフトに装着していたわけですが、 このHRタイプはプロペラシャフトに歯車を設けてリターダ本体をシャフト右側に取り付けるというタイプです。 プロペラシャフトの歯車とリターダ本体の歯車のギア比は約 2 倍で回転が 2 倍に増速されますから、 同じプロペラシャフト制動トルクを発生させるのにリターダー制動力は半分で済む。 つまりリターダ本体の機構 ( ローター & ステーター ) を小さくできて従来機種に比べ約 30% の軽量化 ( リターダの本体重量は約 65 キロ ) を実現しています。 プロペラの右置き型としたのは、 右ハンドルの場合
、 PTO 取り出しが左側になりますから、 それに配慮して日本車仕様として右側装着したというわけです。
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――― | リターダの回転速度を増速するというアイデアは重量がネックだったフォイトリターダにとって、 まさに革新的な取り組みですね。
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森内> |
先ほどヨーロッパ市場で将来需要が見込めるという話をしましたが、 その背景にあるのはこの増速タイプの機種を開発できたからです。
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「 R115H 」 はプロペラシャフトからギアアップするオフライン対応型 ( この図は左ハンドル用で日本車仕様のR115HRはプロペラシャフトの右側に装着される )
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〈 増速比を落としても制動トルク 2800Nm 〉
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――― | 流体式は制動力の高さが魅力ですが、 この R115H の制動トルクはどのくらいですか。
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升田> |
最大値は 3200 ニュートンメータ ( プロペラ軸 ) ですが、 日本車のエンジンおよびミッションは欧米のトラックに比べ回転数が高く設定されていますから、 三菱自動車さんの新型トラクタ装着に際しては増速比を約 1.8 に落としています。 このため、 実用域での最大制動トルクは約 2800 ニュートンメータ程度となっています。
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――― | 増速比を落としても 2800 ニュートンメータというのはすごいですね。
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升田> |
制動トルクの高さが流体式リターダの特徴というか、 フォイトリターダの強みであり、 これが当社の最大の売りであると自負しています。
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――― | 制動トルクの高さ以外の部分では。
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升田> |
進化しています。 細かい部分を申し上げると、 コントローラのコンピュータをデジタル化したことでよりきめ細かな制御を行えるようになっており、 オーバーヒート防止対策はもちろんのこと、 自己故障診断機能も付加しています。 機能面ではこのほか、 CAN 通信や下り坂対応のオートクルーズも対応できますが、 三菱自動車さんは独自のパワータード ( 補助ブレーキ ) を利用するオートクルーズをお持ちですから、 R115HR 装着に際してオートクルーズは採用されませんでした。
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――― | リターダシステムは流体式と磁石式がありますが、 それぞれ一長一短があります。 棲み分けという点についてどう考えていますか。
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森内> |
例えば、 強力な制動トルクがほしい場合は流体式が有利ですが、 運動エネルギーを熱に変換するわけですから、 大きな吸収馬力に見合うように水冷しなければならず、 先ほど言いましたようにコストが高くついて重量も嵩むというネックは否めない。 これに対して永久磁石式はコストも安く電気配線だけですから、 取り付けも簡単ですが、 制動トルクは弱い。 磁石式で大きな制動トルクを確保しようとすれば、 非常に重くなってしまいます。 つまり必要な制動力によって棲み分けられるだろうと思います。 当社としては大きな制動トルクを必要とするラフターやトラクタ、 大型トラック分野は当社製品が伸びていくと期待しています。
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升田> |
一方、 磁石式は空転ロスが大きく燃費が悪くなるといわれています。 というのは、 磁石式はロータのファン効果で冷却しますので大きなファンが設けられています。 これが高速走行中の抵抗になります。 また、 ロータは重いため、 発進時に慣性抵抗となります。 市内走行で煩雑に発進 ・ 停止を繰り返しますと燃費の悪化は避けられないといえます。 この点、 流体式はロータが小さくて軽いですから、 空転ロスが磁石式の数分の 1 です。 逆に燃費を良くする効果もあります。 また、 流体式はエンジン冷却水を使うため、 下り坂でエンジンが冷えることがなく、 その後の加速中のシリンダ内の燃焼を良好に保つという働きもあります。
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森内> |
電磁式リターダを装着したら燃費が落ちるので外してほしいという声が一部で出始めていると聞いています。 電磁式の伸びはリターダ認知度という点で追い風になると期待していた面もあったのですが、 ここにきて、 逆風が吹き始めていることも事実です。 当社のリターダは構造が違いますから、 その辺をきちんと説明していく努力が極めて重要であり、 そうすることで今後の需要拡大につながっていくだろうと考えています。
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――― | ちなみに、 トラックの設計はいまモジュール化が盛んにいわれています。 トラック市場の普及を考えると、 モジュール対応が不可欠な条件になっているように思いますが ・・・・・・。
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森内> |
当社はポリシーの異なるトラックメーカーさん各社に売り込む立場です。 各社さんのモジュール化に個別的に対応するというのは現実問題として簡単にはいかない面があるのも事実です。
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――― | 最後に今後の展望をお聞かせください。
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升田> |
大型商用車は今後さらにきびしい排ガス規制や燃費規制をクリアする必要があります。 その対応としてエンジンのターボインタークーラ化や終減速機の低ギア比化が急速に進んでいくだろうと思います。 これはヨーロッパで実証済みです。
同じ出力の無過給エンジンに比べターボインタークーラエンジンは約半分の排気量です。 エンジンブレーキの力というのは排気量に比例しますから、 半分になります。 エンジンブレーキ力に関してはもうひとつ、 終減速比に比例した車両制動力になりますから、 現在 6 程度の終減速比がヨーロッパ車のように 3 程度になれば、 制動力が半分になります。 つまりエンジンブレーキの制動力は小排気量化と低ギア比化で 4 分の 1 程度になってしまいますから、 強力なリターダが必ず必要になってくると思います。 三菱自動車さんのスーパーグレートのラインアップでもその傾向は現れていますから、 流体式リターダの展望は非常に明るいだろうと考えていますし、 期待もしています。
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――― | 本日はお忙しいところ時間を割いていただきありがとうございました。 ( 菊地 )
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