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特集トラックの倹約術
NRS ・ R120 流体式リターダー装着車が
100 万 km を無故障 ・ ライニング交換なしで走破



● フル稼動で達成した 100 万キロ

大阪 ・ 門真市に本社を構える東來運輸株式会社が保有するリターダー付大型トラック ( 日野 U-FN1KWBA ) が走行 100 万 km を超えて、 なお快調と聞き同社を訪ねた。 東來運輸は東京―大阪間の路線貨物を中心とした運送事業者で保有台数は 43 台である。 保有車両には大型トレーラー 1 セット、 1 台の中型トラック、 2 台の 8 トントラックなども含まれるが、 大部分は大型単車。 高速幹線運送ということで従来は前 2 軸車が多かったが、 重量規制緩和後は GVW25 トンの後 2 軸車が数を増やしており、 現在は 17 台の勢力になった。 主な仕事はヤマト運輸株式会社の宅急便や西武運輸株式会社などの傭車として幹線輸送を引き受けている。 路線貨物事業者だけに走行距離は多く、 宅急便の幹線輸送の場合、 1 往復で 1,200 〜 1,300 km ある東京―大阪間を月に 15 往復、 年間 22 万 〜 23 万 km を走行するという。 ドライバーは担当車制だが車両の稼動を重視して、 担当ドライバーが休暇の日も車両はフル稼動を続ける。 実際に車両が休むのは、 車検整備の 2 日間を除けば正月の三が日だけという高稼動率を誇る。 同社の金城泰雄専務にリターダーを中心に車両技術全般を語っていただいた。 金城氏は大学では経済を専攻、 就職は銀行という経歴の持ち主。 東來運輸就職後はトレーラーの助手を手始めにトラック輸送の現場から徹底的に体験、 大型免許取得後は予備ドライバーとして長距離輸送に従事、 自社の首脳として各地の顧客を回る一方、 管理者の立場、 現役ドライバーの立場でもトラックの技術を見つめているという方である。

昨年 11 月、 100 万 km を走破し点検のため入庫した東來運輸株式会社保有の日野 U-FN1KWBA、 GVW20 トンの前 2 軸のバンボデー車で、 主に大阪―東京間の高速幹線輸送に使われている ( 本項の写真 : NRS )

● リターダーとの出会い

同社の幹線輸送用大型トラックは約 10 年、 150 万 km 走行を目安に代替されるが、 その間の車両に対する評価基準は基本性能の高さと経済性にあるという。 25 トン車も車両価格は高いが、 たくさん積めるほうが経済性が高いから選ぶと明快。 メーカーが用意する様々なオプションも、 外観を飾るようなアクセサリーには一切、 手を出さないが、 安全性は大前提とした上で基本性能を向上するもの、 経済性に効果が認められるものはいちはやく採用してきた。
例えば同社の大型トラックが履くアルミホイール。 これも 1985 ( 昭和 60 ) 年から全車に装着している。 好調な経済に支えられて幹線輸送は車両もフル稼動の過酷な使用環境に置かれていた当時、 タイヤの放熱性に優れたアルミホイールとチューブレスタイヤの組み合わせは高い稼動率を維持する実用性の観点で魅力的だった。
リターダーはブレーキドラムのクラックに起因した事故の報に接してから本格的に検討を始めた。 ブレーキドラムが割れたら事故につながる。 事故にならなくても故障すれば荷主に迷惑をかける。 そうでなくともブレーキドラムを新規に購入しなければならない。 いずれにしてもコストがかかる。 ブレーキの負担を軽減するリターダーは安全性、 コストの面でも大いに魅力的に映った。
当初用意されていた選択肢は流体式 ( NRS 製 ) と渦電流式のリターダーである。 渦電流式リターダーのメーカーからは、 装着したトラック事業者で走行 100 万 km に達した車があると伝えられた。 一方、 最初に流体式リターダーが搭載できたのは排気量の大きな高出力エンジンだった。 流体式リターダーの主ブレーキをほとんど使用せずに体で感じられる減速度には大いに魅力を感じた。 しかし排気量が大きいだけに燃料も食う。 小排気量エンジンを選んだら流体式リターダーの設定がない。 そこでまず渦電流式のリターダーが起用された。
渦電流式のリターダーを使用して、 バッテリーの負荷が相当に大きいが、 応答性は流体式より優れていること、 操作スイッチがハンドルの手元ではなく別置きであり操作性がやや劣ること、 制動性能はあるが減速度の大きさは流体式が遥かに大きかったことなど、 流体式との違いも確認した。 応答性など渦電流式リターダーのセールスポイントも理解した上で、 制動能力に軍配を上げ、 以後は流体式リターダーを積極的に採用するようになった。

●リターダー装着の効果

現在の使用状況はメーカーが宣伝に使いたいというほど。 100 万 km を走行してもブレーキドラムは新品同様。 それだけ主ブレーキの使用回数が激減した。 コストも大幅に軽減されたのかと思いきや、 「 確かにブレーキライニングの張り替え回数が減りコスト軽減は明らかです。 でも、 もともとメーカーさんは標準的な工賃で計算しているのに対して、 我々はもっと安いコストで交換するので、 メーカーさんが宣伝するほど、 大きな金額にはなりません 」 と明かす。
「 また私共ではリターダーのオイル交換をメーカーさんがいう 9 万 km でなくて 5 万 km 程度で実施しています。 これはほかの整備と同時に実施するという考え方なので、 リターダーのオイル交換だけを別に実施するのは効率が必ずしも良くないからです。 単純にコストを比較すれば 9 万 km の交換の方がもっといい数字になるのは明らかでしょう。 でもその影響でオイルクーラーも新品同様だといわれました 」
リターダーの効果を確認して以来、 他社製の車両もリターダー付が選ばれるようになった。 しかしリターダーも各社各様。 特に排気ブレーキの考え方でシステムが異なる。 「 磁石式のものは最初は 1 段のオン ・ オフだけのものを 1 台、 次に 2 段階で効果が変えられる強化型を 2 台採用しています。 NRS 製以外はいずれも排気ブレーキが作動して、 次にリターダーが作動する併用式です。 併用するので制動性能は結構大きい。 ドライバーはそれぞれに使い分けていますから特に講習もしていませんが、 私個人は排気ブレーキはほとんど使わずリターダーだけで走っています。 というのもいわゆるギロチン式の排気ブレーキは熱に弱く、 長時間使用すると熱変形から排気漏れを起こす場合があるのです。 排気ブレーキも使わなければ故障せず、 故障しなければ交換部品も不要。 リターダーだけで使えるならその方がいいと考えます 」
使い勝手の上で、 流体式リターダーは効きが 4 段階選べる。 「 私は 1 段、 2 段と弱い方から序々に段数を上げていくのではなく、 初めから 2、 3 段に入れて十分な減速を得た上で、 段数を弱めるという使い方をしています。 初めにグンとスピードを落としておいたほうが安心です。 長い坂ではあらかじめ 2、 3 段で速度を殺しておいて、 熱を持って効果が鈍くなってきたと感じたら、 1 段に戻してやるとすぐ効果が回復するので、 そんな使い方をしています。 オン ・ オフだけや調整段数が少ないタイプではそうした使い方は無理ですが ・・・ 」

●荷主の信頼を勝ち取る経済性能

リターダーに対する考え方にもうかがえるが、 同社が期待するトラックの経済性能の評価基準とは何か。 リターダーメーカーは安全性や省力化もセールスポイントにしているが、 同社の最も大きな選択理由は何だろうか。
「 基本はなんといっても路上故障をさせない。 つまり荷主さんに迷惑をかけないことが最も大事です。 荷主さんの信頼性を欠いたら商売が成立しません。 例えばターボ。 私共ではメーカーごとに走行距離を定めてディーラー保証の契約をしています。 例えば 30 万 km なり 40 万 km 走行したら無条件でオーバーホールします。 60 〜 70 万 km 何もしないという事業者もあります。 けれども高回転の過酷な条件で使われるタービンの軸に狂いが生じたら、 やはり路上故障で修理代もかさみます。 メンテナンスコストで見れば、 壊れるまで使ってから交換した方がトータルでは安いかもしれません。 でも荷物が遅れたら大変です。 別の例ではエンジンオイル。 節約する方法は交換時期を延ばせばよく、 船舶用のディーゼルエンジンオイルのように植物油を使えば 10 万 km もつかもしれません。 でも私共ではオイル交換に併せてグリスアップもし、 足回りの点検ができます。 オイルの交換時期が長ければ、 ほかの点検も長い間、 何もしなくなっていくと思うのです 」

●さらに探求を進める省コストアイテム

「 リターダーも経済性で選んでいますが、 故障しないかといえば故障はありました。 効きっぱなしになったことがあります。 でも応急処置で効かなくしておけば排気ブレーキも通常のブレーキもあるから走行に支障はありません。 リターダーが不調でも走る ・ 止まるは可能です。 リターダーがあればさらに性能が向上するということであって、 なければいままでのトラックです。 安全性はドライバーの心構えですからリターダーがないと危険とは言えません。 しかし装着するメリットは明らかにあります 」
東來運輸では当然ながらタイヤにも大きな関心を寄せている。 26 万 km 走行したタイヤがあると勧められ 2 台に採用したら 30 万 km 以上、 長いもので 36 万 km も走り、 逆にメーカーに驚かれたことも。 現在は 1 度更生して 40 万 km まで使っているそうだ。 タイヤの寿命も燃費同様、 走行方法、 つまりはドライバーの技量によって大きく差が出る。 総じてレベルが高いドライバーが多いようだが、 まだ改善の余地があると考える金城氏は、 ドライバーによる燃費のバラツキをなくす電子制御機械式トランスミッション搭載車の導入も決めた。
「 リターダーにも流体式、 渦電流式、 磁石式、 メーカー推奨の省燃費タイヤもあれば電子制御機械式トランスミッションといろいろ揃っていますから燃費テストができると思いますが、 その結果は様々なコンポーネントの相乗効果であって、 個々の性能は正確にはわからない 」 と語る金城氏だが、 社長共々、 これまでも新しく採用した機能を持つ車両には多大な関心を持って見守ってきたという。 その評価基準は常に荷主さんとの信頼関係の構築にプラスになるかどうかであり、 管理者自ら関心を持って見守る目を備えているからこそ、 同社はメーカーにとっては厳しくも欠かせぬ存在なのである。
流体式リターダー
NRS R120 リターダー
今回 100 万 km 走破を達成した NRS の R120 リターダーは、 補助ブレーキの一種 ・ リターダーの中でも 「 流体式 」 と呼ばれる。 流体式リターダーのトップメーカーであるドイツのフォイト ( Voith ) 社が開発し、 提携先のニッポンリターダシステム ( NRS ) が国産化したものだ。 R120 リターダーは、 日野スーパードルフィン ( カーゴ ) のほか、 三菱ふそうスーパーグレート ( トラクター )、 日野 ・ 三菱の観光バスやタダノ ・ 加藤のラフテレーンクレーンに装着車が設定されている。
流体式リターダーの特徴 :

摩耗部分がないのは、 他の方式のリターダーと同様だが、 本体重量に対してブレーキ力が大きく、 効きは滑らかである。 また本体からの発熱、 電力消費はともにごくわずかで、 連続使用にも比較的強い。 車間距離監視型オートクルーズと組み合わせた場合には、 かなり広範な運転の自動化をサポートできる。
作動の仕組み :

本体のケースに向かい合わせに 2 つの羽根車 ( ステーターとローター ) が収められ、 ステーターは本体に、 ローターはプロペラシャフトに取り付けられている。 走行時はローターが回転しているが、 スイッチを作動させるとケースへオイルが送られる。 ローターはステーターへ向けてオイルをはね飛ばすが、 ステーターは固定されているので回転抵抗を受ける。 この抵抗がブレーキ力となり、 車を減速させる。 ブレーキ力は、 送り込むオイルの量で調整できる。
抵抗を受けたオイルは熱を持つため、 エンジン冷却水でオイルを冷やす冷却装置が本体に取り付けられる。 なおオーバーヒート防止のため、 水温が極めて高くなるとリターダーの効きを一時的に弱める安全制御が組み入れられている。
主要諸元 :

最大ブレーキトルク : 2,000Nm ( 204kg-m )、 重量 110s ( プロペラ軸中間取り付け。 トランスミッション直付けのホイールパーク車は 65s )、 作動油 : カーゴトラックではシングルグレードエンジンオイル ( 容量 5L、 9 万 km もしくは 2 年で交換 ) を使用。

東來運輸で使われている流体式リターダーが、 NRS ・ R120 型、 NRS の流体式リターダーは国内で 1 万台、 オリジナルのフォイト社のリターダーは全世界で 25 万台が販売されている
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ステーターとローターをオイルが往復する間に運動エネルギーが熱に変わり、 ブレーキ力となる
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100 万 km 走行後の
R120 リターダー分解調査結果
100 万 km でも性能低下なく
継続使用が可能なコンディションホイールブレーキも
ほとんど消耗なし
1994 年 7 月、 日野スーパードルフィンプロフィア ( U-FN1KWBA ) に装着されて東來運輸に納車された R120 リターダーは、 車とともにフル稼動を続け、 4 年 4 カ月後の昨年 11 月に 100 万 km 走行を果たした。
NRS では、 R120 リターダー ( 製造番号 W070356 ) を回収して詳細な調査を実施した。 調査結果によると性能低下はなく各部のトラブルも全く見られず、 まだまだ使用を続けることが可能であったという。 ホイールブレーキは、 新車以来無交換にもかかわらず各輪ともほとんど摩耗が見られない。 さらにブレーキドラムにおいても、 高速走行時のブレーキ発熱が原因となるブレーキドラム内面の熱クラックやドラム外周の発錆もなかった。 このように R120 リターダーの耐久性と、 ホイールブレーキの負担軽減ぶりが見事に実証された形だが、 その調査結果レポートから、 ここでは 100 万 km 走行後のリターダーと車をご紹介しよう。

品質調査のため 100 万 km 走破車から取り外された流体式リターダー ・ 汚れてはいるが、 調査の結果性能にはほとんど低下が見られなかった
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R120 リターダーブレーキ性能の比較、 破線が新品出荷時で、 実線が 100 万 km 走破後 ( ブレーキトルク設定は最高 1,750Nm )
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ブレーキ力 :

リターダーの基本性能であるブレーキ力 ( トルク ) をベンチにて測定した結果、 出荷時のデータとほとんど同じ性能を維持していることが確認された。
オイル回路 :

オイル洩れは確認されず。
ベアリング :

ベアリング部の疲労による損傷はなく、 そのまま継続使用が可能であった。
各シール部 :

シール面、 面当たりとも異常は見られない。
ステーター ・ ローター部 :

オイル回路に重大なトラブルを招くキャビテーション ( 気泡発生 ) による羽根の摩耗や損傷はなく、 リターダーの作動が正常であったことが確認できた。 シャフト部分にも摩耗などはない。
オイルクーラー :

熱交換用コアに腐食は見られず、 耐圧性 ・ 気密性も維持されていた。
制御用電磁弁 :

電磁弁の作動精度、 エア回路の気密性とも正常で、 製造時の品質を維持していた。
その他 :

ケース各部などのボルトは、 緩み ・ 脱落は全くなかった。
リターダーマウント部の亀裂や損傷などもなく、 マウントラバーにも硬化は見られなかった。
シャーシー側 :

ホイールブレーキを分解したところ、 100 万 km 無交換でありながら、 ライニングの摩耗は 6 輪で平均 2o ( 最高 2.5o、 最少 1.5o ) であった。 なお、 東來運輸ではリターダー非装着車はおよそ 20 万 km で 10o ほどの摩耗が見られるという。 ブレーキドラム内面にも、 熱クラックの発生がほとんど見られなかった。
左は 100 万 km 走破車のブレーキライニングとドラム内面、 右はリターダー非装着車の同部分、 100 万 km 走破車のライニングは摩耗が少なく非装着車にはあるドラムの熱クラックも見られない
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Upon hearing that a truck equipped with the NRS hydraulic retarder has been operated for more than a million kilometers and is still in a great condition, we visited Tourai Unyu of Osaka. They operate 43 units of trucks for highway haulage. Their trucks are operated for 22 to 23 million kilometers annually. We interviewed Mr.Kaneshiro, the Director who has the vast knowledge of operations who also occasionally drives the trucks.
Mr.Kaneshiro states that Tourai Unyu has always obtained the components that are beneficial economically. They were earlier to utilize the lightalloy wheels and tubeless tires in Japan. The retarders were obtained to combat the heat cracks of the brake drums.
Along with the hydraulic retarder, they have also utilized the edicurent retarder as well as the permanent magnetic retarder, but they have been actively obtaining the hydraulic retarders recently as a result of their high braking performance.
The retarders are highly effective, as the brake linings have only been reduced by 2mm on the Hino U-FN1KWBA that has been operated for a million kilometers. As the brake linings are usually reduced by 10mm after being used for 200,000 kilometers, it proves the high potential of the retarders. On the other hand, the cost merit of eliminating the change of linings is minimal as the labor costs are low and other regular maintenance must also be undertaken. The same can be said about the other engine components, with the emphasis being placed on trouble prevention instead of using the engine to its limit, as a sudden trouble will lead to the late arrival of the cargo resulting in the loss of customer's respect. They are in midst of researching for new cost saving items other than the retarder.
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