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アフターマーケット 2001年10月号掲載


 クルマの制動装置は主ブレーキと駐車時に使用するパーキングブレーキがあるが、空車時と積載時で重量配分が大きく変動するトラックでは補助ブレーキとして排気ブレーキが装着されている。さらに、積載時の長い下り坂などでも安全に減速できる第4のブレーキとしてリターダや圧縮開放式ブレーキなどが標準またはラインオプションとして設定されている。
 なお、リターダとはトランスミッション後方、またはプロペラシャフトの中間に取り付ける補助ブレーキで、圧縮開放式ブレーキはエンジンの圧縮膨張工程の抵抗を利用して補助ブレーキとして活用するシステムである。



ライニングの長寿命化

 リターダがその効力を最も発揮するのは連続する下り勾配だ。特に積載時は下り勾配では速度が出過ぎてしまい、フットブレーキを踏む頻度が増加する。フットブレーキを使いすぎればライニングの温度が上昇して制動力が落ち、最悪の場合にはペーパーロックやエア切れによりブレーキが効かなくなることもある。
 しかし、排気ブレーキとリターダを組み合わせて効率良く減速すれば、長い下り坂でもフットブレーキを使うことなく車速を維持することが可能となる。しかも、ホイールをロックするフットブレーキとは異なり、プロペラシャフトの回転力を制御する方式のためコーナー途中での安全な減速も可能(トレーラは除く)となる。また、フットブレーキの使用頻度が減少するためライニングの寿命が飛躍的に向上。最低でも2倍、4〜5倍と増加し、制動トルクの高い流体式なら使い方次第で100万q無交換も可能となる。
 同時に、無駄な加減速を抑制して定速走行が可能となるため、効率良く活用すれば燃費を向上させることも可能となる。中には「リターダを装着したら以前より燃費が悪くなった」という意見もあるが、これはリターダのスイッチの切り忘れたり、スイッチを常時入れたままにしているためシフトチェンジなどでアクセルを放した際にもリターダが作動してしまい、燃費がかえって悪くなっているというケースが大半である。


リターダを効率良く活用すれば、ライニングの寿命を大幅に
向上することが可能となる。

リターダの制動トルクの発生方式は3タイプ

 一口にリターダといっても、制動トルクを発生するシステムの違いにより永久磁石式、電磁式、流体式の3タイプがある。
 永久磁石式は住友金属工業がいすゞ自動車と共同で開発したもので、永久磁石を利用して制動力を得る。その原理は一般家庭に設置されている電圧計と同じで、磁石の磁界内で電導体が動くと導体内に生じる過電流が磁石の磁界と作用して強い制動トルクを生み出す。同方式は軽量コンパクトで、装着時にバッテリーやジェネレーターの容量アップが不要などのメリットがある。97年からは本体の幅を半分にしたBシリーズも投入されている。
 電磁式は永久磁石ではなく、バッテリーの電力でプロペラシャフトの回転力を制御する方式で東京部品工業の「エディターダ」と澤藤電機の「エキサイタ付リターダ」がある。「エディターダ」は大型だけでなく、小型クラスへの展開を進めており、00年からは構造上排気ブレーキの装着が難しい小型CNG・LPG車に、排気ブレーキに変わる補助ブレーキとして標準装着されている。また、「エキサイタ付リターダ」は本体内に発電機能を持たせることにより、オルタネーターやバッテリーの容量アップが不要となっている。
 流体式は向かい合った2枚の羽根車の間にオイルを流入して制御する方式で、我が国ではニッポンリターダシステムと曙ブレーキ工業が製品化している。流体式の特長は大容量化が可能なことであり、制動力が他の方式に比べて高い。ニッポンリターダシステムのリターダはエンジンの冷却システムを利用することで、大容量化と軽量化を両立させている。また、曙ブレーキ工業の「AKR100」は、100kgf・mという大きなトルクを生み出す割には軽量で、トルクが強弱2段切替のため下り坂などで車速を一定に保ちやすい。


永久磁石式の登場で国内の普及率が向上

 リターダの歴史は古く、日本でも名神高速道路の開通により高速時代の幕開けを迎えた年代に、すでに流体式リターダを装着した高速バスが開発されている。しかし、その後も思ったほど販売は伸びず、販売台数に占めるリターダ装着車の割合はごく僅かである。
 ただ、総重量規制緩和以降に住友金属工業の永久磁石式リターダがいすゞの25トン車にライン装着されたことで、リターダに対する認知度が急速に高まった。この結果、大型車では標準またはやラインオプションとしてリターダを設定するクルマが増えている。この結果、10トン車以上のカーゴタイプのトラックに限定すれば、装着率は30%程度にまで増えている。
 また、認知度の向上により、重量物運搬のトラクタなどではより強力な流体式リターダを装着するユーザーが増えており、ニッポンリターダシステムの流体式リターダをオプション設定している三菱のスーパーグレートのトラクタでは装着率が6×4で約30%、6×2でも5%となっている。
 さらに、中型や小型でも東京部品工業の「エディターダ」と澤藤電機の「エキサイタ付リターダ」などをオプションまたは標準(CNG/LPG車など)設定するクルマが増えている。


住友金属工業の永久磁石式リターダがいすゞ車にライン装着されたことで、
国内でのリターダに対する認知度が向上した。

装着率向上により今後はリターダの補修需要にも期待

 高速を使って長距離を移動することが多い欧州ではリターダの装着率が40%以上に達しており、連続高速走行には欠かせない装置として定着している。このため後からリターダを装着したいという要望が多いため、欧州では当初から後付けが可能な設計を行うことで、補修部品として流体式リターダを設定しているメーカーもある。
 日本ではまだ普及率が低いためこのような設計を行っているメーカーはなく、仮に後付けを行う場合には工賃、部品代とも膨大な金額になってしまう。
 住友金属工業の永久磁石式なら複雑な配管や配線等が必要ないため後付けも不可能ではなく、僅かだが実際に後付けを行ったケースもある。もっともこれも例外的なケースであり、現状では国内でのリターダの補修市場は皆無といって良いだろう。しかし、保有期間が長期化している現在では、今後リターダの普及が進めば新たにリターダを追加してでも使い続けるという要望が増え、欧州同様の補修市場が形成される可能性もある。
 リターダ本体の補修需要は皆無だが、流体式では作動用のオイル交換需要がある。流体式リターダのオイルにはエンジンオイルが使われており、メーカーでは10万q前後での交換を推奨している。使用量は5〜6リットル程度であり、入庫時に同じオイルを使用するエンジンオイルとの同時交換を勧めると良いだろう。
◇          ◇
 リターダの普及の障害となっている最大の要因は、価格である。リターダの価格はほぼ制動トルクに比例している。例えば制動トルクが3200Nm(320kg f・m)の流体式なら同1000Nm(100kg f・m)の永久磁石式の3倍以上の価格となってしまう。本来ならユーザの用途に合わせて制動トルクを選ぶべきなのだが、現状ではトラックメーカーごとにオプション設定されているタイプが異なることから、他社との価格面での競合や値引きの対象とされることを避けるため営業担当者が積極的に推奨していないというケースも多い。
 現在、各トラックメーカーは低燃費化や新長期規制に対応した排出ガス対策に取り組んでいるが、これに合わせてターボ化による排気量削減や最終減速比の低減などが行われエンジンブレーキなど補助ブレーキ力の相対的な低下が予想される。このため、今後はより強力なリターダの必要性が高まり、リターダのライン装着が一層進むものと思われる。
 また、現在欧州でリターダの普及が進んでいる理由の一つとして、速度制限の問題がある。欧州はアウトバーンやオートルート、アウトストラーダなど、日本より速度規制が緩い高速道路網が発達している。しかし、大型車に関しては時速90q程度と厳しく制限されており、時間を短縮するためには「できるだけ減速せずに一定速度で走り続ける」ことが求められている。そのための有効な手段が、リターダなのだ。日本でもまもなく大型車への速度リミッター装着が義務付けられるため、これまでのように法定速度を無視して時間を短縮するという違法な行為はできなくなる。このため、一定速度を維持するために有効な装置としての関心が一層高まり、リターダの装着率が増える可能性が高い。


ニッポンリターダシステムが34回東京モーターショー
などのイベントに参考出品したAR120

リターダメーカーの動向
流体式の強力な制動力をセミトラクタ搭載に展開中

(株)ニッポンリターダシステム
本社=大阪府寝屋川市木田元宮1―1―33
 TEL.072―820―0911
設立=平成元年4月1日
資本金=5000万円
社長=澤田直章

ヨーロッパで主流になっているR115Hシリーズを右ハンドル用に開発し、三菱ふそうスーパーグレートに搭載している。このR115HRリターダは、パワーラインからギアで増速させている。これによりリターダの回転速度は2倍にでき、制動力は約半分で従来と同じ制動力が得られる。制動力を生み出すローター、ステーターの作動室も半分の大きさになり、リターダは約30%の小型軽量化を実現している。その最大制動トルクは3200Nmと強力で水冷式の強みを十二分に発揮している。また、シャーシ内の片側に寄せることにより、PTOが最大限に活用されるように設計されている。
同社は、従来のR120リターダ(最大トルク2000Nm)とともに、日野、三菱のトラック・バス・セミトラクタ等の商用車にオプション設定され、建機にはタダノ、加藤製作所、コベルコ建機のラフテレーンクレーンにも標準装着されるなど、重量車両に幅広く利用されてる。
「強いリターダで安全と快適を!」をキャッチフレーズに、強みの制動力はそのままに、更なる軽量化とデジタルコントロール化の切り替えにも取り組んでおり、期待は大きい。


永久磁石が起こしたリターダ革命
いすゞ・日野のGVW25t車に標準装備


住友金属工業(株)
大阪本社=大阪市中央区北浜4―5―35
 TEL.06―6220―5111
東京本社=東京都中央区晴海1―8―11
 TEL.03―4416―6111
創業=明治30年4月
資本金=2379億円
社長=下妻博

同社リターダは世界最強の永久磁石を利用した永久磁石式。その特徴は(1)超小型・軽量(2)シンプルな構造で装着・点検整備が容易(3)消費電力がゼロで、バッテリー、ジェネレーターの容量アップが不要―などが上げられる。97年には作動方式を変更し、制動力を向上させ、重量を大幅にダウンした小型・軽量のBタイプを投入。現在はBタイプが主流となっている。
いすゞのGVWトン車や日野のスーパードルフィンに一部標準装備されるなど広く普及しており、91年1月の発売以来(中型車用は92年4月)、6万台強を発売している。


トルクの大きさとレスポンスの速さが特長の「AKR100」

曙ブレーキ工業(株)
本社=東京都中央区日本橋小網町19―5
 TEL.03―3668―5171
設立=昭和11年1月
資本金=90億3739万円
社長=信元久隆

同社は流体式リターダ「AKR100」を開発した。この特長は、100kgf・mという大きなトルクに比べて、搭載重量が90kg(本体47kg)と軽量である点にある。これはアルミ素材を採用することにより可能とした。
AKR100は流体式の課題であるレスポンスにタイムラグが生じるという点に関しては、リターダ内部に湿式多板クラッチを採用することで0・15秒という速さを実現した。さらに、トルクの強弱2段切り替えを採用しているため、オートクルーズと連動した補助ブレーキ統合制御が可能であり、下り坂などでセットした車速を維持することも可能となっている。
96年にフルモデルチェンジした三菱自動車・スーパーグレートにオプション採用されている。


小型トラックへの採用拡大
エディターダ(電磁式リターダ)


東京部品工業(株)
本社=東京都町田市南成瀬4―21―1
 TEL.042―739―1471
設立=昭和24年8月
資本金=43億6730万円
社長=西内靖

同社は、電子制御式を採用した電磁式リターダ(商品名=エディターダ)を開発、市場に投入している。エディターダは独自のエディ処理により、制動トルクを従来の1・5倍に強化した。
 電源のON/OFF操作だけでシステムが作動するため応答性がよく、また機械的可動部分が少ないシンプルな構造のため信頼性が高い。トランスミッション後部およびプロペラシャフトの中間位置に取り付けプロペラシャフトの回転を直接制御するため安全性も高い。大幅な部品の変更なしに装着が可能なため、低価格を実現した。
ミッション直付けタイプのE型、プロペラシャフト中間取り付けタイプのM型、トレーラーに対応したデフアクスル直付けタイプのD型をラインナップしている。 日産ディーゼルの大・中型車、三菱自工と日野自工の中型車にオプション設定。今年からいすゞエルフのCNG、LPG車に制動力15f・mのリターダが標準設定されている。また、発電機付きのリターダの開発にを完了している。


エキサイタ付リターダを投入
日野にオプション設定


澤藤電機(株)
本社=東京都練馬区豊玉北6―15―14
 TEL.03―5999―3355
創立=大正8年5月
資本金=10億8050万円
社長=有馬光彦

同社はオルタネータ機能を内蔵したエキサイタ付リターダを開発した。このリターダは、本体の中に発電機能を持っているため、取り付け時にオルタネータの出力アップやバッテリーの増強などが不要である。
軽量・低コストで、ABSとのマッチングも良い。後付けが可能なためトラックだけでなくトレーラへも容易に搭載できる。制動力は35〜100kgf・mまでの4タイプで、中型車から大型車までを網羅している。
99年春には日野自動車の4トントラックにオプション設定された。


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