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輸送経済新聞 平成14年2月5日掲載




 平成十五年九月からのスピードリミッタ−の装着義務付けを受け、既に対策を講じる事業者が出てきた。事故防止、燃費効率の向上、運転者の労務軽減といったメリットは期待できるが、新たなコスト負担要因にもなるからだ。鉄道などへのモーダルシフトが進む恐れもある。装着義務付けが、これまでの長距離輸送のありようを変えそうな中、トラック事業者もシステムと安全の両面で新たな対応が求められる。



 ランテック(本社・福岡県福岡市、高谷孝社長)は今年の代替を機に、約七十台の車両にスピードリミッター導入した。約千二百万円のコスト負担だ。
 スピードリミッター導入の影響について、「従来から法定速度での運転を順守させていたので、特に問題はない」(滝内貞男常務)とする。
 ただ、「指定時間に間に合わせるために、一部の顧客に対しては、出荷時間を早めてもらうような交渉が必要になってくる」(同)のも事実。
 現状は、こうした対応をしなくても問題のない顧客の貨物を中心に、スピードリミッターを導入した車両を使っている状況だ。
 使用過程車の場合、装着費用を含めて一台当たり二十万円前後掛かる。今後開発される新車にはメーカーがライン生産の中に組み入れ装着するので、五万円程度の負担で済むと見られる。
 このため、久留米運送(本社・福岡県久留米市、二又大栄社長)では、新車から順次、導入していきたいと考えている。しかし、法定速度を守らせるドライバー教育については、強化している。
 同社では、コスト負担は別として、事故防止、燃費効率の向上、ドライバーの労務軽減といったメリットを期待。さらに、指定時間の制約についても、「国による義務付けなので、出荷時間を早めてもらうなどの交渉もスムーズにいくのでは」と、義務付けに伴う悪影響よりメリットのほうが大きいと見る。

◆北海道業者は不利
 しかし、スピードリミッターが与える影響は、これだけにとどまらない。
 札幌通運(本社・北海道札幌市、富山憲一社長)では、「高速道路の整備が不十分な北海道の事業者までも一律に義務付けを課すのは、おかしい」(富山社長)と言う。
 そして、松岡満運輸(本社・北海道札幌市、高松三郎社長)は、「現状でも、本州からの貨物を道内一円に三日目配送するのが、やっとのところ。この強みを維持するつもりだが、スピードリミッター義務付けが与える影響は大きい」(阿部満常務)と戸惑いを隠せない。
 また、全日本トラック協会(=全ト協、浅井時郎会長)の豊田英次専務理事は、業界全体に与える影響としてはデメリットの方が大きいと指摘する。
 まず、すべてのトラックが一律時速九十キロに制限されるため、追い越しが難しくなくなる。ドライバーにも緊張感がなくなり、追突などの小規模事故は逆に増える可能性は高いというのだ。
 また、到着時間が遅れることに対して、顧客を納得させられないかもしれないという点にも言及する。
 高速道路の大型トラックの最高速度は時速八十キロ。しかし、事情に暗い荷主の場合には、スピードリミッターによる制限時速九十キロを前提として到着時間を割り出すため、要求する輸送時間を厳しくする恐れがあるのだ。
 こうした装着義務付けに伴う悪影響をにらみ、全ト協では安全運転マニュアルを作成。また、平成十四年度から、追突事故の防止について国土交通省と共同調査に乗り出すことを検討している。

◆鉄道との綱引きも
 さらに、丸運(本社・東京、望月雅夫社長)では、「長距離でなく区域に重点を置いているので、影響は少ない」(望月社長)とした上で、トラック業界全体に与える影響については、「長距離トラックに対して、JR貨物の競争力が高まる可能性が出てきた」(松田健相談役)と見ている。
 モーダルシフトの加速について、味の素物流(本社・東京、横江有道社長)では、「両端はトラック事業者にしかできない」(坂本勲夫会長)ことを強調する。さらに、JR貨物のレールやヤード編成の時間的な問題で、JR貨物を利用しても現状の顧客ニーズには、こたえられないと言う。
 味の素物流ではこのほど、九州で、スピードリミッター装着の実証実験を実施。これにより、九州域内には装着以前と以後での時間的な問題はないことが明らかになった。次は四日市―米子間で行い、いよいよ長距離の実証実験に乗り出す構えだ。
 このように、スピードリミッターの義務付けは、トラック輸送に大きな影響を及ぼしそうだ。

(佐藤亜季)


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