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輸送経済新聞 平成14年2月19日 掲載


陸運業界再編の契機か
 5日付一面で、スピードリミッター義務付けの記事を掲載。この中で、長距離トラックに対してJR貨物の競争力が高まると報じた。取材したトラック事業者の多くがJR貨物の優先性を口にした。
 全日本トラック協会の豊田栄次専務理事でさえ、「こんなことを自分の立場で言ったら会員事業者からの反発にあう」としながらも、スピードリミッター義務付けに当たって、“モーダルシフトが加速する恐れ”に言及した。
 豊田専務理事によると、これまで、JR貨物を利用した場合、荷の積み降ろし時間を考慮しなければならなかった。このため、スピード面で優位にあった長距離トラック。しかし、リミッター義務付けで、トラックのスピード競争力が落ち、相対的にJR貨物の競争力が高まる可能性が出てきたと言うのだ。
 当記事で扱ったのは、長距離トラックに対するJR貨物の構図だったが、JR貨物をフェリーに置き換えてもよい。
 当記事にその後寄せられた感想では、あるフェリー会社の読者が、「リミッター義務付けは、JR貨物以上に、フェリーやRORO船の海上輸送モードに影響がある」との考えを示した。リミッター義務付けでモーダルシフトが加速する観点から、海上輸送も視野に入れるべきだという。
 確かに、その通りだと思う。しかし、ここで論じたいのは、陸運業界の再編ということだ。
 JR貨物への転換にしろフェリー利用の活発化にしろ、モーダルシフトが加速する恐れが出てきたことで、これまでの長距離トラック輸送に何らかの影響を及ぼすのは必至だ。トラック業界にとっては、脅威になることである。
 しかし、“モーダルシフトが加速する恐れ”を否定しない豊田専務理事は、「トラック事業者の輸送手段の選択肢が増えると考えればよい」との逆転の発想を唱えた。
 また、「逆にビジネスチャンスだ」ととらえるトラック事業者もいる。この会社は、トラックだけでなく、航空や海上輸送を事業の柱としている。トラックで都合が悪いのであれば、他の輸送モードを提案することで顧客ニーズを満たすことが出来る。同社のように、多様なサービスメニューを持つことができるトラック事業者が、義務付け問題の「価値組み」になるとみる。
 このような考え方は裏返せば、長距離輸送については、必ずしもトラックに力を入れる必要がなくなりつつあるということも示している。リミッター義務付けに伴い、長距離輸送については、トラックの優位性がこれまでほど発揮されない可能性がある。
 ただし、ドア・ツー・ドアの末端輸送は、JR貨物でもなく、フェリーでもなく、トラックにしか出来ない。トラックが陸運業界で不可欠な役割を果たすことに変わりはない。
 また、リミッター装着義務付けに関係なく、成城大学の岡田清名誉教授はこうみる。「貨物の低迷期には、末端の集配力に力を入れ、貨物を集荷できるトラック事業者が勝ち残る」と。
 この事業モデルを先駆けて実現させたのが、ヤマト運輸だ。ヤマトの場合、集配力に徹底的に経営資源を投入し、路線は下請けに委託するなどでコストを削減。これにより、成功企業の地位を確立した。
 高度成長、バブル経済といった好況時には、末端の集配力より、長距離の輸送力に比重が置かれる。しかし、現在は、逆の時期のただ中にある。末端の集配力で他社との差別化を図り、顧客ニーズをつかむことができるかが勝負どころだ。
 加えて、今回のリミッター装着の義務付け。いよいよ、トラック事業者、特に、特積み事業者が、自社の経営資源を路線ではなく末端の集配に投入し、需要を開拓していく時期を迎えるであろう。
 リミッター義務付けを皮切りに、モーダルシフトの加速、トラック事業者の集荷競争といった陸運業界の再編が本格化しそうだ。


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