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今年1月10日、横浜市瀬谷区瀬谷3丁目の県道で、走行中の重機運搬のトラクタトレーラからトラクタの左前輪タイヤが外れ、歩道を歩いていた29歳の主婦を直撃、この主婦がまもなく死亡。一緒に歩いていた4歳の長男とベビーカーに乗っていた1歳の次男も軽いケガを負うという悲惨な事故が起きた。神奈川県警の調べによると、車軸とホイールを介するハブが破損し、タイヤがブレーキドラムごと外れて下り坂を約50メートル転がり、主婦の背中を直撃したもので、タイヤとホイールをあわせると重量は約140kgになるという。現場は交通量の多い直線道路であった。
当初、ハブが壊れて脱輪するという事故は極めてレアなケースとされたが、その後、事故を起こした三菱ふそうザ・グレート・トラクタが、過去に複数の脱輪事故を起こしていることが判明。一部のマスコミは、車両の構造的な欠陥を疑い、かつてのリコール隠し事件とオーバーラップさせる報道も見られた。特にTV各局のワイドショー番組で大きく取り上げられ、「一刻も早い原因究明が求められています」式のレポートが繰り返されたことで、社会的にも大きな関心が寄せられる事故となった。折も折、1月25日には北海道で大型トレーラの右側のダブルタイヤがホイールごと外れて対抗の乗用車にぶつかり、2人が軽いケガを追うという事故が発生。さらに翌日には栃木県で10トントラックのタイヤが外れ、後続の3台の車に次々とぶつかるという事故(ケガ人なし)も起きている。また、これらの一連の報道の中で、ほとんどのマスコミが「トラクタ脱輪事故」を「トレーラ脱輪事故」と報じるなど、トラクタとトレーラの違いを把握しないまま、徹底した原因究明を求める、笑えない報道姿勢も見られた。
自体を重く見た国土交通省では、管轄の陸運支局に情報収集を指示すると共に、三菱自動車に対する聞き取り調査を実施。1月22日、三菱自動車は同社型で過去23件の車輪の脱落を確認していると発表。原因はボルトの締め付け不良など整備不良によるものとし、ザ・グレート・トラクタをはじめ約12万4000台を対象に無償の自主点検を実施。この結果、2月5日までに点検を終えた約5600台のうち、8.6%に当たる約48車両から、ハブのベアリングが規定値の0.8ミリ以上磨耗していることが分かった。三菱自動車では、整備工場などで車輪を着脱する際、取扱説明書に定めたボルトの締め付け力が守られず、ハブに想定外の力がかかったのが磨耗の原因と見ている。国土交通省もこの見方を追認する模様だ。
このトラクタ脱輪事故が起きた際に、本誌も何人かの専門家に確認したが、いずれも、他社でも同様の機構を採用しており、構造的な欠陥ではなく、整備不良としか考えられないという答えであった。三菱自動車は重トラクタのシェアが比較的高いため、事故例が多く見つかったのではないかと見る向きもある。従って、今後の調査結果を慎重に見守る必要はあるが、現在では整備不良が事故の原因という見方が一般的である。尤も、矛先をむけられた形のさる整備業者からは、こんな辛辣なコメントも寄せられている。
「ブレーキドラムごと外れた今回のトラクタの脱輪事故は、極めてレアケースということだが、実際にはベアリングが減った・軸がずれた・ナットが緩んだといった事例は当り前のようにある。今回の事故では、車検の項目で言うと、車軸の方向性を検査するサイドスリップの項目が関わってくると思うが、検査項目はあるにはあっても、どこまで検査できるか、検査方法自体が問題だと思う。要は、今は検査のための検査で、その原因が何に起因しているのか、どこをどう直せばどう良くなるのか、極めて曖昧なままになっている。今はこういう時代だから、心ある整備業者が『ここはこうした方がいい』と言っても、『そんなに高いんじゃ、おまえの所に車検は出さない』で終わり。ユーザーも苦しいから、経費削減で車歴を目一杯伸ばして、しかも整備費を極力抑えている、それが今回の事故の背景にあると思う。だからといってそれを許していたら、事故は無くならない。仏つくって魂入れずじゃないけれど、車検の点検項目があるから、『それでいい』ではない。それをどう有効に運用していくかが肝心だと思う。国もメーカーもそういったところまで踏み込んで、真剣に考えなきゃいけないのに、自分の責任を回避することしか頭にない。だから、整備不良という灰色というか、玉虫色に解釈できる原因を特定してそれで幕を引いてしまう。我々にすれば、問題はそこから、ハブベアリングの話だけではない、潜在的な事故の要因はまだまだある、それをどうすればいいかが一番の問題だ」。
大型車は1年ごとに車検があるから、それを受けてさえ入れば安全というものでないだろう。
ところで、たまたま整備の問題がクローズアップされたが、むろんトラックの重大事故の問題は、トラクタの脱輪事故だけではない。昨年の12月28日には、香川県内の大型保冷車が高松市で乗用車に追突。母子4人を死亡させた事故は、フェリーで航走中、船内でドライバーが酒を飲んだ末に起こした事故だった。99年に東名高速で高知県の大型トラックが酔っ払い運転で幼児を死亡させた事故の記憶も消えやらないのに、サービスエリアで酒盛りをするトラックドライバーの姿がたびたびTVで放映され、そのモラルが問われもしている。
改めて考えて欲しいが、どう繕おうが所詮トラックは、使い方を誤れば「走る凶器」である。走行エネルギーが大きい分、その加害性も極めて大きなものがある。しかも、事故の原因は1つとは限らない。例えば、過積載や運転技量の未熟さ、お粗末な道路行政も事故の遠因になりうることは言うまでもない。事故はむしろ複合的な要素が絡み合い、原因には遠因が、遠因には背景があり、起こるべくして起こるものと言えるのではないだろうか。であれば、誰しもが重大事故の加害者になる可能性があるのだ。こと事故防止に限って言えば、メーカーもユーザーもドライバーも整備業者も、むろん監督官庁も、逃げの姿勢ではなく、それぞれが真っ向から事故防止に取り組まなければなるまい。それぞれがそれぞれの立場で、その責任をしっかりと受け止め、加害性の高いトラックのフェイルセーフを確立しなければならない。責任逃れではない、それぞれの立場で責任を全うすることしか、事故に勝つ方法はないのだ。トラックの重大事故防止は、ほかでもない、トラック関連の仕事に従事する我々全員の連帯責任である。
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