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月刊ニューとらっく 2002年11月号 掲載



ドイツ自動車工業会(VDA)が主催し毎年開催する自動車ショー「IAA」は西暦奇数年が乗用車ショー、偶数年が商業車ショーである。今年02年は偶数年なので、「IAA2002商業車ショー」が盛大に開催された。筆者の知る限りIAA商業車ショーは世界最大級規模の商業車ショーであり、欧州の新技術・マーケット動向発信の場として重要と考え、毎回、定時定点観測の為に出向いている。今回は02年9月12日から19日までの8日間、定例開催地ハノーバー・メッセで行われた。今回からテーマを分けて注目された出展をリポートする。第1回は世界初の新技術、大型トラック・シャシメーカーの展示、架装メーカーの再編など欧州トラック界の新動向をとり上げる。


壮観の極み、IAA2002屋内展示の一部(第13館)。側面開閉車が見える

ここにも側面開閉車が・・・

こちらはカーテン式トレーラ

世界初・新技術二題

  1 作動液が水!流体式リターダに革新製品
      エンジン一体型「アクアターダ」登場

 欧州はリターダの普及が世界で最も進んでいる地域だ。大別して流体式と電気式があるが、減速・制動エネルギーの吸収に際し、高効率で安定した性能が得られる特徴が評価されて流体式(ハイドロゥリック)リターダの普及が顕著だ。
 従来、一般的な流体式リターダはトランスミッション後部に装着され、ハウジング内に一対の固定・回転翼車(ステータとタービン)を有している。作動流体には低粘性油を利用する。通常の走行中はハウジング内から作動流体は除去されており、スイッチ操作で瞬時に作動流体がハウジング内に圧送・充填される。推進軸から駆動されるタービン度攪拌された作動流体がステータで抵抗を受け、これが減速・制動トルクを発生させ、リターダとして作動する仕組みだ。作動流体の充填量によって吸収エネルギーを調節する事が出来る。吸収エネルギーは熱となるが、エンジンの冷却液との間で熱交換され、最終的にはラジエータで放熱される。
 今回、世界で初めて発表された新方式リターダは、独フォイト(Voith)社が独トラック・バスメーカー・MAN社と共同開発した製品「アクアターダ(AQUATARDER)」で、作動流体にエンジン冷却液を利用する「水リターダ」であることが目新しい。フォイト社がもともと水力発電用タービンメーカーであったことを考えると、今回の製品の着想はなるほどと理解できる。

VOITH社が開発した“水リターダー”本体。VOITH社ではこれを「AQUATARDER」と呼ぶ

“水リターダー”(クーリングファン直後の部分)を搭載したMAN社の大型6気筒ディーゼルエンジン。 MAN社ではこのリターダーを「PRITARDER」と呼ぶ

一般的流体リターダーはトランスミッション後部に搭載される。この場合は、左側が熱交換器だ
 出展エンジンはMAN社の大型直列6気筒ディーゼルエンジンで、「アクアターダ」はエンジン前端部に装着されている。タービンはクランクシャフトに直結され、作動流体はエンジン冷却液をそのまま利用する。通常走行中にはリターダ内部は“空(から)”の状態だが、運転者がスイッチを操作すると専用ポンプによって、段階的に内部に作動流体(エンジン冷却液)を予め定めた量だけ圧送する。例えば、1段目は3分の1、2段目は3分の2、3段目はフル充填という具合で、作動流体の量に見合った制動力が発生する。
 この新型「アクアターダ」は、従来のトランスミッション後部装着型リターダと較べると、
(1)変速ギヤ比の分だけタービン速度が増速されるので、同じ減速効果を得るのに小さな装置ですむ[小型軽量化、低コスト化]
(2)吸収エネルギーに相当する作動流体の温度上昇は、そのままエンジンの冷却装置(ラジエータ)から放熱することができるので、従来、独立装備していた熱交換器と関係配管が不要となる[装置の簡素化、軽量化、低コスト化]
(3)長降坂路のように減速時間が長い場合、従来のタイプではエンジン冷却水の過冷(オーバークール)現象が生ずるが、「アクアターダ」では減速時の吸収エネルギーを冷却系に放出するので過冷現象が防止できる[エンジンの適温維持]
(4)エンジンの過冷現象が防止されるので、次のエンジン加速時に直ちに正常な燃焼が継続できる。また、冬季にはヒーターの効きが安定する「排出ガス性能安定化、快適性の改善」などの特長が指摘できる。
 エンジンに対する装着は、先ず「アクアターダ」のステータが一体に組み込まれたケーシングを支えるボスがエンジンブロック側に追加される。またクランクシャフト前端部のフランジを利用してタービンがボルト・オンされる。MAN社のエンジンはクランクシャフト前端部からも後部と同等に出力を取り出せる構造になっているので、新規部品は殆ど必要ないという。あとは冷却系と結ぶ配管とリザーバタンク、専用ポンプなど若干の追加部品が必要だ。最大のノウハウのかたまりが制御システムである。
 エンジンを含めた制動系のシステム制御は、エンジンブレーキ(燃料噴射系制御)+排気ブレーキ+リターダとしてフィーリングを含めた最適制御が求められる。フォイト・MAN両社は協力してこの課題を解決し、世界初の商品化に成功した。こうした経緯により「アクアターダ」は、当面、車載についてはMAN社が独占使用権を行使する。その際の商品名は「プリ・ターダ(PRI-TARDER)」と命名されている。独占使用権は期間限定の契約で、いずれ他社のエンジンにも搭載される見通しである。事実、フォイト社は内外トラック・バスメーカーに対し「アクアターダ」の営業を積極展開中であり、わが国でも10月29日から幕張メッセで開催する「第36回東京モーターショー商業車」に出展の予定になっている。


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