日本ボルボは 4 月 12 日、 大型トラック/トラクタ「ボルボ FH 12 」「ボルボ FM 12 」シリーズの大幅改良を実施して同日より発売した。 世界第 2 位の販売実績を誇るボルボ・トラックは国内でも 89 年の F 16 導入以来着実にシェアを拡大し、 現在約 1500 台が日本で稼動している。 今回の改良は 93 年にデビューした FH / FM シリーズとしては初となる大掛かりなもので、 ひときわ精悍な顔つきが印象的だが、 改良部位は外観からパワートレーン、 キャブ、 シャシーと車両全体に及ぶ。 このビッグマイナーチェンジによって商品力を向上し、 安全・環境はもちろん、 経済性や輸送品質など大型トラックに求められる性能を高めたボルボは今年、 前年実績比 50% 増にあたる 600 台の販売目標を掲げ、 中期的目標である国内全需 5% の獲得に向けて勢いに乗りそうだ。 ボルボ・トラック事業部営業部 河内邦夫部長、 製品技術部 岸伸彦課長に話を伺った。

岸 伸彦
製品技術部課長
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河内邦夫
営業部部長
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精悍なキャブスタイル
新型はまず、 一新されたキャブ外観が新鮮。 高いアイポイントと居住性が安全快適な長距離輸送に寄与する FH 12 と、 優れた乗降性で地場輸送用途にも使いやすく長距離用までオールラウンドにカバーする FM 12 という 2 種類のキャブを擁するラインナップは従来通り。 両タイプとも、 高張力鋼を使用し、 独自の強度・衝撃基準をクリアした高剛性キャブの骨格はそのままで、 ボルボのアイデンティティである筋交いの入った長方形のラジエターオープニングも踏襲されているが、 フロント周りのデザインモチーフは穏やかな曲線基調となり、 台形縦型の一体型ヘッドランプや下部のフロントパネルと一体化されたバンパー、 あるいは新デザインのサンバイザーとあいまって精悍な雰囲気を醸し出している。 いささか無骨な印象もあった従来型に対しては、 明確なイメージチェンジというわけだ。
もちろん、 このデザイン変更は機能性の向上を伴う。 リーフ車を除く FH 12 の前照灯は明度が高く寿命の長い HID ディスチャージヘッドランプとされ、 キャブ下回りの空力見直しで 5 〜 7% の空気抵抗低減により 2% の燃費向上も実現(導風板、 シャシースカートなど高速走行燃費を約 10% 低減するエアフローシステムもオプション設定)。 日本向け専用設計の左側用 3 点式サイドミラーもデザインを改めた上で電動格納式となって実用性を高めている。 そして、 フロントバンパー下部には前部突入低減装置 FUPS 即ちフロント・アンダーラン・プロテクションを 2003 年の欧州規制に先駆けて全車標準装備した。 これは乗用車等との衝突時に相手車両の車両前部下へのもぐりこみによる相手乗員の被害低減を目的にした装備で、 先の先進安全自動車 ASV U にも盛り込まれたが、 市販車としては、 もちろん国内初となる。 パッシブセーフティの中でもトラックの乗員だけでなく、 他者(車)の安全にも気配りするのは長く安全性を追求してきたボルボらしいところ。 このアンダーラン・プロテクションは後面、 側面にもリアバンパー/サイドガードとして装着されている。
居住性と積載効率を両立させた E - キャブ
FH12 E-キャブの室内

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今回の変更の中でもひときわ注目されるのが、 FH / FM 双方のカーゴ系に設定された新しいキャブサイズ、 E - キャブだろう。 これは従来のショートキャブの前後長を 150 mm 延長して居住性の大幅向上を図ったもので、 幅 630 mm × 長さ 1830 mm の格納式ベッドを標準装備するほか、 充分なシートリクライニング角度を確保。 サイドトランクをはじめ豊富な収納スペースを備え、 艤装品も基本的に他のキャブと共通としている。 また、 カーゴトラック用として後部窓を廃止し、 遮音材の増強と共に高い静粛性を実現したのも特徴だ。
気になる架装性については、 従来型ショートキャブで出っ張っていたエンジンカバー部までキャブバックパネルを延長した格好のため、 従来のショートキャブとほぼ同等で、 バン架装では 10 m 級、 ウイングボディでも 9.8 m の荷台内法長を確保。 ちなみにキャブマウントは従来のショートキャブ用のスパンを踏襲している(なお、 E - キャブに限らず FM 12 のキャブサスペンションは従来のコイル式から、 前:コイル/後:エアサスペンションのセミエアサス式に変更された)。 FH / FM にはそれぞれ E - キャブのほか、 幅 700 mm × 長さ 2000 mm の大型ベッドを備えたスリーパーキャブと、 そのハイルーフモデルであるグローブトロッターの 3 タイプ、 合計 6 種類のキャブが用意される( FM 12 のグローブトロッターはダンプ用のみ)が、 カーゴ系は E - キャブが中心になると同社では予想している。 なお、 この E - キャブはショートキャブに代わって世界中に展開されるが、 全長 12 m の単車カーゴで荷台内法 9.7 m というのは本来日本固有のニーズであり、 左側の電動格納式サイドミラー共々、 ボルボ本社が日本市場の声に積極的に耳を傾けている証左の一端といえよう。

運転席回り(FH12)
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スリーパーキャブ(FH12 4×2トラクタ)
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一新された室内艤装
もちろん、 キャブ室内も大幅に手が入れられている。 インパネは運転席に向かって回り込むラウンドタイプの形状こそ似るが全くの新設計となり、 メータークラスター中央には走行距離、 速度、 燃料消費量などさまざまな情報を日本語で表示し、 車両の状態が一目で分かるインフォメーションディスプレイを装備。 手元で操作しやすいホイールパークレバーのほか、 空調、 オーディオ等のレイアウトも見直され、 インパネに併せてドアトリムも変更を受けた。 SRS エアバッグを標準採用したステアリングホイールのデザインも一新されており、 FH 12 には CD プレーヤー付オーディオの操作ボタンも備わる。 グローブトロッターについては収納スペースを大幅に増やし、 ベッドには煙感知機とネットも装備された(スリーパー仕様共)。
また、 同じく新設計されたシートはクッション幅を 20 mm 拡大した上で、 プリテンショナー付シートベルト一体式となって、 ショルダーアンカー/リトラクターを背もたれ部に装着。 シートのエアサスペンションが動く際もベルトが一緒に動くため、 運転者のシートベルトに対する違和感が払拭され、 装着率向上への寄与も期待されるところだ。 この運転席シートは前後スライド 190 mm /高さ 100 mm の広い調整範囲を備え、 FH 系が電動調整式 + 自動調温式シートヒーター付、 FM 系は手動調整式のコンフォートシートとなっている。
より扱いやすく 効率を高めたパワーライン
次にエンジン/トランスミッションについて。 FM / FH シリーズが採用する直列 6 気筒ターボインタークーラーエンジンは、 今回、 経済性とドライバビリティをさらに向上させ、 ターボコンパウンドシステムを採用した 500 馬力仕様を追加。 型式呼称も D 12 C から D 12 D 型へと変わり、 全タイプが欧州排出ガス規制ユーロ 3 適合となった。 これは 12130 cc の排気量や OHC + ローラーフォロワー式タペットを配した 4 バルブヘッド、 ユニットインジェクター式電子制御燃料噴射装置といった基本構成はそのままに、 噴射系と燃焼の改善によって約 2 %の燃費低減を図り、 低い回転域から幅広い出力特性として、 より高いギア段での走行を可能としたもの。 大きなトルクのエンジンをゆっくり回して摩擦損失を低減するのは効率向上手法の王道である。 エンジン冷却ファンもパワーロスの少ない電子制御式を採用した(FH 12 の 380 馬力仕様を除く)。
この結果、 380 馬力、 420 馬力、 460 馬力という最高出力の数値は変わらないが( 340 馬力仕様は消滅)、 それぞれ定格発生回転数が低速側に拡大。 従来型では 1700 〜 1800 mm だったのが 380 馬力仕様は 1450 〜 1800 mm に、 420 馬力、 460 馬力も 1500 〜 1800 mm とパワーバンドが広がった。 最大トルクも 188 kg / m 、 204 kg / m 、 224 kg / m の数値は同じだが、 発生回転数が従来の 1100 〜 1300 mm から 1100 〜 1400 mm と台形のトルクカーブを描くフラットな特性に( 188 kg / m 仕様は 1050 〜 1300 mm )。 従来からの特徴である 1100 〜 1700 mm を省燃費回転域のグリーンバンドとし、 1900 mm でフューエルカット( VEB エンジンリターダ使用時は 2300 mm まで許容)するという低回転大トルク型の性格が新型ではより明確になり、 運転しやすくなっていることが予想される。

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ユーロ3適合の新12リッターD12D型エンジン
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ギアトロニック付 14段セミオートマチックミッション
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一方、 最強の 500 馬力仕様は、 従来 FH 16 系 6 × 4 重トラクタに積まれていた D 16 B 型 16.1 リットルエンジンを補完する格好で FH 12 トラクタに設定された。 最大の特徴はターボチャージャーで吸入空気を過給した後の排気エネルギーを使って第 2 タービンを回し、 その回転力をフライホイールに伝えるターボコンパウンドシステムの採用である。 排気エネルギーを機械的動力に直接変換することで効率と応答性が向上し、 従来の D 16 B 型より一回り小さく、 重量も 190 kg 軽い 12.1 リットルエンジンで同等の出力を発揮しながら同機比約 3.6% の低燃費化を実現した。
最大出力の額面は D 16 B の 520 馬力から 500 馬力となったが、 発生回転数は 1800 mm から 1600 〜 1800 mm にパワーバンドを拡大、 最大トルクも同じ 245 kg / m ながら 1000 mm から 1000 mm 〜 1300 mm というフラットトルク化で扱いやすさが向上している。 同機構の量産トラックへの採用は国内初であり、 今後の排出ガス規制対応や高効率化の進む大型ディーゼルエンジン用として注目されているデバイスをいち早く実用化した格好だ。 なお、 純正エンジンオイル VDS - 3 規格の新設定に伴い、 同オイル使用時の交換インターバルは最大 6 万キロもしくは 6 ヶ月ごとに延長された。
トランスミッションは( 3 速 × レンジ切り替え + クローラー) × スプリッタ切り替えによる前進 14 段/後進 4 段はそのままだが、 VT 2014 / VT 2514 型ともにトルク増加に対応した強化を図った上で、 セミオートマチックのギアトロニック仕様が大幅に設定を拡大。 FM 系の一部のほか、 FH シリーズでは緩和仕様の 6 × 4 重トラクタを除いて全車標準装備となった。 FM のマニュアル仕様にもオプションで選べる設定で、 快適性と経済性を両立する同ミッションへの自信が窺える(レスオプションとしてマニュアル仕様も選択可能)。
ギアトロニックは 14 段マニュアルミッションを電子制御化したもので、 発進/停止のクラッチ操作の完全自動化に加え、 A ポジションでは E (エコノミー)/ P (パワー)プログラムによる完全自動変速となる。 マニュアル変速操作も可能だが、 セミ AT というよりも事実上のフルオートマチックというべき内容で、 運転者のイージードライブ化と技量によるバラツキを排除した高燃費が大きなメリットだ。 なお、 マニュアルミッションについても今回リンケージがワイヤーコントロール式に改められ、 ストロークを低減。 より確実で軽快な操作性を実現した。
低床化、 新型エアサス、 EBS + ディスクブレーキの採用拡大
シャシーも新機軸が盛りだくさん
シャシーについては、 まず 6 × 2 標準床タイプのフレームのハイトを 300 mm ( t 7 mm )から低床用と同じ 266 mm ( t 8 mm )とするなどの変更により、 従来と同じ 295 / 80 R 22.5 サイズタイヤの総輪装着で 90 mm の低床化をもたらす新標準床としたのが新しい( 6 × 4 は 300 mm 仕様を踏襲)。 また、 カーゴ系で 80% の装着率を誇るフルエアサス(総輪エアサスペンション)の設定も一層拡大され、 FM の 6 × 2 低床カーゴのほか、 FH の高速 4 × 2 トラクタにも新設された。 後軸のエアサスについても 01 年モデルで 4 × 2 トラクタに採用された新設計の軽量タイプをタンデムアクスルにもリーディング/トレーリングタイプとして展開。 前後異径の 4 バッグベローズ、 中空スタビライザー、 ロッド類のコンパクト化によってシングルアクスルで約 50 kg の軽量化をもたらす新型サスペンションは走行安定性の向上を図り、 リモコン付の電子式車高調整装置はもちろん、 空車時に駆動軸重を最大限確保する自動軸重配分システムを備えている。 FM の 6 × 4 リアエアサスカーゴなど、 設定拡大によりカーゴ、 高速トラクタにはエアサスが全車標準装備に。 乗り心地と操安性を両立したボルボのエアサスは従来から好評を博していたが、 全面展開で一層の商品力訴求を目指す格好だ。
そしてシャシー関連で最も大きなニュースは EBS /総輪ディスクブレーキが全エアサス車に標準採用されたことだろう。 ディスクブレーキは放熱性・耐フェード性に優れ制動距離を短縮、 かつ軽量というメリットを持つ。 01 年モデルから一部に採用されたボルボの新型ローターは特殊合金によるソリッドタイプで、 ハブ部とスプラインで嵌合させる構造を採り、 従来指摘されていた不均一な熱膨張によるローター亀裂といった耐久信頼性の問題を解消。 競合他社比 3 倍の耐久性を発揮するという自信作である。 新型 FH / FM シリーズのエアサス車ではこれを総輪に装着し、 電子制御ブレーキシステムと組み合わせることで、 現時点で考え得る最良のブレーキシステムとした。
EBS はブレーキペダルからブレーキバルブまでの制御を電気信号に置き換えることで作動応答性を高めるだけでなく、 各輪に装着した輪速センサーによってスリップ率を監視しながら、 ブレーキペダルの踏み込みに応じた推定減速度を実現するよう各輪への供給エア圧を最適制御。 空/積車時の効き方の違いを排除するのはもちろん、 単車状態のセミトラクタのように前後軸荷重が偏る場合や、 トレーラ牽引時( EBS トレーラの場合)にも安定かつ突き上げのないスムーズな制動を得ることが出来る。
ABS を包含するシステムであるのはもちろんのこと、 ボルボではエンジンとの統合制御によりトラクションコントロール機能も持たせて空車時もスムーズな発進を実現。 さらにブレーキペダルを操作するだけで、 サービスブレーキ、 補助ブレーキを走行状況に応じて最適に組み合わせながら必要な減速度を発生させる、 独自のブレーキ・ブレンディング機能を新開発し、 ギアトロニック、 もしくは流体式リターダ装着車に採用した。
これは従来の 2 段階から 3 段階に制動力を細分化した VEB (エンジンリターダ=ボルボ・エンジンブレーキシステムの略)、 または 4 段階切り替えの流体式リターダを状況に応じてサービスブレーキシステムのエア圧とバランスさせながら作動させるもので、 エンジン回転数に比例して制動力が変化し、 また回転数下限 900 mm でカットされる VEB に対してもブレーキエア圧を加減して常にドライバーが求める減速度をもたらす。 降坂時のフェード現象を排除するほか、 ブレーキパッド磨耗を抑える優れた安全装置である。
標準在庫設定による納期短縮の実現
このほか、 トラクタ完成車は標準架装の内容を見直し、 ステンレス製キャットウォークを大型化、 トレーラ用エア・電気配管取り出し位置をアーチ型フレームに設置、 開閉式サイドガード、 樹脂フェンダーの採用などで使い勝手をさらに向上。 FH 12 ・ 4 × 2 トラクターには 500 馬力エンジン、 リターダ、 グローブトロッターキャブ、 フルエアサスペンション、 アルミホイール、 レザーシート、 サイドスカートなどをフル装備した最上級車「エクスクルーシブ 500 」も新設定した。 また、 FH / FM の標準在庫車両として 4 × 2 トラクタ 4 タイプ、 6 × 2 カーゴ 5 タイプを設定し、 納期の短縮を図ったことも注目されるところ。 受注生産車両についても約 2 ヶ月半の納期短縮を実現しており、 これまでの経験で培ってきた組み立て品質向上により初期トラブルも減少するなど、 国産トラックに対する競争力も増している。 市場はタフな時期が続くが、 新型の投入を機にモチベーションを高め、 年間 1000 台レベルへの飛躍も視野に入れるなど、 日本ボルボは意欲充分だ。
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